クラシック音楽・・・。
音楽の授業では習ったけど、なんだかよく分からない。このように感じている人も多いのではないでしょうか。
今回のテーマは、「クラシックがさっぱり分からない」という人のための西洋音楽史です。
作曲家の名前や音楽用語、西暦などを覚えるためではなく、その時代にどんな音楽がつくられて、どんな人が聴いていたかを知ることを目的としています。なので、西暦や用語などはほとんど出てきません。
その時代を代表する名曲を聴きながら、音楽の歴史をたどってみましょう。
参考書籍
西洋音楽史―「クラシック」の黄昏|岡田 暁生 (著)
中世音楽〜ルネサンス音楽

クラシック音楽といっても、「一体いつ頃の音楽のことなの?」と疑問に思っている人も多いはず。
クラシック音楽は、18世紀から20世紀初頭までの音楽。音楽の授業で習ったと思いますが、バロック音楽・古典派・ロマン派といわれる音楽のことです。
音楽は教会のためのものだった
では、そのクラシック音楽はどのようにして生まれたのでしょうか。
そのルーツは、中世(9世紀頃)の「グレゴリオ聖歌」までさかのぼります。グレゴリオ聖歌とは、ラテン語で書かれた単旋律の歌のこと。
その時代は天変地異や未知の病など、人々は得体の知れない恐怖に怯えていた時代。そんな中、神に捧げる歌として教会で歌われていたのがグレゴリオ聖歌です。
(グレゴリオ聖歌)
こんな曲を教会で聴いたら、心が静まり、何だか救われるような気がしますよね。
器楽曲がつくられるように
単旋律だったグレゴリオ聖歌は、時を経て次第に2声、そして4声へとアレンジされていき、ルネサンス期(15世紀後半)になると、そこに器楽の伴奏が加わるように。
それまで無伴奏の合唱曲が中心だった音楽ですが、16世紀あたりから器楽曲が大量につくられるようになります。
(ガブリエーリ:ピアノとフォルテのソナタ)
ちなみに、このガブリエーリという作曲家は、レオナルド・ダ・ヴィンチのちょうど100年後くらいを生きていた人、というとなんとなく時代のイメージが湧くのではないでしょうか。
教会の影響力が弱まり、人々が美しいものを純粋に楽しむことを知り始めた時代です。
17世紀に入り、国王が絶大なる権力を握るようになると、長い歴史の中でずっと教会中心だった音楽が、やがて王侯貴族たちが楽しむための娯楽へと変わっていきます。バロック音楽のはじまりです。
バロック音楽

教会音楽から宮廷音楽へ
バロック時代を代表する音楽家と言えばやはりこの人、“音楽の父” バッハ。
バロック時代を代表するとは言いつつも、バッハの曲がバロック時代の最もオーソドックスな音楽とも言えないようです。
というのも、この時代は絶対王政の時代。フランス国王ルイ14世が建てたヴェルサイユ宮殿に代表されるように、フランス・イタリアを中心に宮廷文化が最も栄えていた時代です。
そんな時代にヨーロッパでよく聴かれていた曲がこのような曲(よく聴かれていたと言っても、あくまで “王様たちが” ということですが・・・)。
(ヘンデル:王宮の花火の音楽)
これを聴くと、豪華な宮殿で王様たちが宴を楽しんでいる様子が浮かんできますよね。花火をバックに食事をしたり踊ったり・・・きっとそんな雰囲気の中で聴かれていたんだろうなぁ、と想像してしまいます。
そして、王侯貴族たちが好んだ究極の娯楽がオペラの上演。そういうわけで、バロック時代にはヨーロッパ中で大量のオペラ曲がつくられていったのです。
教会音楽をつくり続けたバッハ
一方で、バッハの生まれ故郷であるドイツ北部は、プロテスタントが信仰されていたエリア。
そのような宮廷文化(こちらはカトリック)を好まず、人々は教会を中心に慎ましい生活を送っていたといいます。
そんなエリアで育ったバッハは、教会で子どもたちに音楽を教えながら、ひたすら教会のための音楽を書き続けていたのです。
(バッハ:トッカータとフーガ ニ短調)
なんとも神々しいですよね。
バロックを代表する音楽家は、まさに “孤高の天才” といった感じですね。
古典派音楽

王侯貴族から市民階級へ
古典派といえば偉大なモーツァルトとベートーヴェンが活躍した時代。あと忘れてはいけないのが “交響曲の父” ハイドン。
クラシック音楽といえば、コンサートホールでオーケストラの演奏を聴くというスタイルが今では一般的ですよね。
でもバロック時代までは、音楽は王侯貴族たちの祝宴のBGM、もしくは教会で演奏されるもの。決して一般市民のためのものではありませんでした。
でも18世紀も半ばに入ると、国王の権力が次第に弱まっていき、徐々に市民階級(といっても一部の上流階級の人たち)へも音楽の道が開けていきます。
お金を出せば誰でも演奏会で音楽を楽しめるように。そして、その演奏会用につくられた音楽、それが交響曲のはじまりです。
(ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」)
誰もが知るベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。
もはや教会のためでも宮廷のためでもない音楽、といった感じですよね。宮殿でいきなり「ダ・ダ・ダ・ダーン!」と始まったら王様はどんな反応をしたんでしょうか・・・⁈
“交響曲の父” といわれるハイドンですが、実は “弦楽四重奏曲の父” とも呼ばれています。
(ハイドン:弦楽四重奏曲第77番「皇帝」)
あれ?どっかで聴いたことあるような・・・。そう、サッカー好きならワールドカップで何度も耳にしたことがあるはず。ドイツの国歌のもとになったのがこの曲です。
「全体の秩序」から「旋律」へ
では、バロック時代と古典派とで音楽はどのように変わったのでしょうか。
バロック時代までの音楽(特に教会音楽)で最も重視されていたのは、全体としての秩序。一方、国王や教会の手から離れ自由を得た古典派時代では旋律(メロディ)が前面に出てくるように。
先ほどのバッハの「トッカータとフーガ」を口ずさんでみてください。最初の方は良くても途中でワケがわからなくなりませんか?
それはメロディよりも全体としての秩序が重視されているから。一方、モーツァルトの曲は気持ちよく口ずさむことができますよね。
(モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク)
ロマン派音楽

作曲家の個性が咲き乱れる
ロマン派を代表する音楽家は・・・たくさんいて絞りきれません。
というのもこの時代は、古典派時代よりもさらに自由度が増し、音楽家の個性が咲き乱れた時代。
シューベルトやショパン、ワーグナー、ブラームス、ドヴォルザーク、チャイコフスキーなど、さまざまな作曲家が活躍しました。
聴衆も多様化が進み、音楽にあまり精通していない一般市民(といってもお金持ちたち)も音楽を楽しむようになります。
そうなってくると、作曲家がつくる音楽も音楽通を唸らすというよりは、多くの人を惹きつけるような曲を書くようになっていったといいます。
具体的には、大音量でダイナミックに展開される曲や、演奏技術を見せつけるようなテクニカルな曲です。
(パガニーニ:カプリース第24番)
音楽のことなんて分からなくても、思わず「おぉ、スゴイ!」と唸ってしまうような曲ですよね。
ロマンチックではない時代のロマンチックな音楽
ところで、「ロマン派ってなんで “ロマン” なの?」と思った人もいるのではないでしょうか。
ロマン派の時代(19世紀)は、産業革命が起きた時代。人々は日々労働に追われ、忙しい毎日を送るように。
そんな時代の人たちに求められたのが、ひと時の休息と癒しをもたらしてくれるような曲、夢と希望を与えてくれるような曲です。
(ショパン:ノクターン第2番作品9の2)
なんだか聴いているだけで心が洗われるような気がします。ロマン派時代には、このようなロマンチックな曲がたくさんつくられたのです。
ロマン派音楽とは、ロマンチックとは程遠い世の中だからこそ生まれた、ロマンチックな音楽なんですね。
参考書籍
今回はこちらの本を参考に、小学生でも分かるように音楽史をかなりざっくりとまとめました。
西洋音楽史についてもっと深く知りたい人、ロマン派以降の20世紀の音楽について知りたい人は、ぜひ読んでみてください。
クラシック音楽初心者でも楽しめる、おすすめの本です。