みなさんは、スティーブ・ジョブズの「伝説のスピーチ」を聴いたことがありますか?
2005年にスタンフォード大学の卒業式で行われた彼のスピーチは、多くの感動と共感を呼び、「伝説のスピーチ」とまで言われています。
今回は、そのスピーチの内容を子どもたちでも理解できるように、なるべくやさしくまとめました。
彼のスピーチは、人生でもっとも大切なことは何かを教えてくれます。

みなさんは、iPhone や iPad を持っていますか?持っていなくても、知っているという人は多いでしょう。
スティーブ・ジョブズ(1955年~2011年)は、その iPhone や iPad をつくっている、アメリカのアップルという会社をはじめた人です。
アップルは、ジョブズが20歳のときに、自宅のガレージではじめた会社です。
アップルはのちに、Mac(パソコン)、iPod(音楽プレイヤー)、iPhone(スマートフォン)、iPad(タブレット)など、数多くの大ヒット製品を生み出し、世界でもっとも大きな会社のひとつになりました。
自分のやっていることを信じること

ジョブズが夢中になったもの
ジョブズは、リード・カレッジという大学に入学しました。でも、両親ががんばって働いて貯めたお金は、すべて大学の学費に消えていってしまいます。
だから、「そこまでして大学に行く価値があるんだろうか?」と思った彼は、6ヵ月で大学をやめてしまいます。
大学をやめたあと、彼は ”こっそりと” 大学の授業にもぐりこみます。自分が興味のあった授業、「カリグラフィー」の授業です。彼は、すぐに授業に夢中になりました。
カリグラフィーとは、このように文字を美しくデザインすることです。

マックの誕生
ジョブズはそのとき、カリグラフィーの授業が、自分の今後の人生に役立つとは全く思っていませんでした。
でも10年後、最初のマッキントッシュ・コンピュータ(マック)をつくっていたとき、そのとき学んだことを思い出しました。
そして、授業で学んだことのすべてをマックに組み込みました。美しいフォントを持ったコンピュータ、マックの誕生です。
フォントは、コンピュータ画面に表示するときの文字のデザインのことです。たとえば、明朝体(みんちょうたい)やゴシック体などがあります。

点と点がつながった
ジョブズは、スピーチの中でこう言っています。
「もし自分が、大学であの授業にもぐりこんでいなかったら、今のマックはなかったでしょう。」
もちろん、彼が大学にいたときは、そんな先のことまで考えて、”点と点をつなげる” ことはできませんでした。
でも、あとからふり返ってみると、はっきりと “点と点がつながった” のが見えたのです。
信じること
先を読んで、点と点をつなぐことはできません。ジョブズのように、後からふり返って初めてできるわけです。
だから、点と点が将来どこかでつながると、信じなければいけません。自分のやっていることを信じなくてはなりません。
Believing that the dots will connect down the road will give you the confidence to follow your heart, and that will make all the difference.
「点がいつかつながると信じることで、自分の心に従う自信が生まれます。これがのちに大きなちがいをもたらしてくれるのです。」
自分のやっていることを好きになること

アップルをクビになる
ジョブズは、20歳のとき、自宅のガレージでアップル社をはじめました。アップルは、その10年後、4,000人以上のひとたちが働くほど大きな会社になりました。
でも、彼が30歳になったとき、会社を突然クビになってしまいます。会社の方向性についての考え方の違いから、自分がはじめた会社をやめさせられてしまったのです。
自分がもっとも大切にしていたもの(=会社)が、急に目の前から消えてしまいました。
でも、彼は本当に自分のやっていることが好きだったのです。会社をやめさせられても、まだその気持ちは変わりませんでした。
だから、もう一度やり直してみようと決めました。
アップルにもどる
アップルをやめてから、ジョブズはネクストとピクサーという会社をつくりました。
ピクサーは、みなさんも知っているアニメ「トイ・ストーリー」をつくった会社です(いまはウォルト・ディズニー社の子会社になっています)。

やがてアップルがネクストを買いとり、彼はアップルにもどることになりました。
好きになること
では、なぜ彼はもう一度最初からやり直すことができたのでしょうか。
それは、自分のやっていることが好きだったからです。自分がすばらしいと信じていることを、やり続けていたからです。
The only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking, and don’t settle. As with all matters of the heart, you’ll know when you find it.
「自分がやっていることを好きになること。もしまだ好きなことが見つかっていないなら、探し続けてください。見つけたときには、自分の心がそれとわかるものです。」
自分の心に従うこと

今日が人生最後の日だとしたら
ジョブズが17歳のとき、どこかでこんな言葉を読んだそうです。
「毎日、これが人生最後の日だと思って生きなさい。」
それからの30年間、彼は毎日、自分にこのように問いかけてきました。
If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?
「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることは本当に自分のやりたいことだろうか?」
その答えが「いいえ」である日が続いたら、何かを変えなければならないということです。
ガンと診断される
大学でスピーチを行う1年前、ジョブズはすい臓(ぞう)ガンと診断されました。「あと3~6ヵ月しか生きられないかもしれません。」と医者に言われたのです。
のちに、それが手術で治せるものとわかったので、彼は手術を受けて無事回復しました。このように死に近づいた経験から、彼はこう言いました。
Almost everything — all external expectations, all pride, all fear of embarrassment or failure — these things just fall away in the face of death, leaving only what is truly important.
「まわりからの期待やプライド、失敗や恥への恐怖、こういったものはすべて、死を前にして消えてなくなります。本当に重要なことだけが残るのです。」
心に従うこと
死はいつか必ず訪れるものです。みなさんの時間は限られているのです。他の誰かの人生を生きて、無駄にしてはいけません。
自分の心に従うことです。
Have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become.
「自分の心や直感に従う勇気をもってください。心や直感は、自分が本当は何になりたいのかすでに知っています。」
ハングリーであり続けよう
ジョブズが若い頃、「ホール・アース・カタログ」という本がありました。彼らの世代ではバイブルのひとつとなっていたものです。
その「ホール・アース・カタログ」の最終号の背表紙には、早朝のカントリーロードの写真がありました。ヒッチハイクをしている光景が浮かんでくるような写真です。

写真の下にはこんな言葉が書かれていました。
「ハングリーであり続けよう、おろか者であり続けよう。」
I have always wished that for myself, and now, as you graduate to begin anew, I wish that for you. Stay hungry, stay foolish.
「私は常に、自分自身そうありたいと願い続けてきました。そして今、みなさんに対しても、同じことを願っています。ハングリーであり続けよう、おろか者であり続けよう。」
スティーブ・ジョブズ おすすめの本
スティーブ・ジョブズ 伝説のスピーチ&プレゼン
今回紹介した、スタンフォード大学でのスピーチの生声CDと、全文スクリプト、完全対訳、語注が付いています。スピーチで英語を勉強したい方におすすめです。
スティーブ・ジョブズ I
「スティーブ・ジョブズについてもっと知りたい」という方におすすめの本です。プレゼンテーションから、経営の極意まで、ジョブズの思考がたっぷり詰まった内容です。
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