「おっ、100点取ったの?スゴいじゃん!」
「またこんな点数取って、この子大丈夫かな…。」
親としては子どものテストの点数って、どうしても気になりますよね。点数の良し悪しでついつい一喜一憂してしまったり。
でも普段仕事をしていて、このように感じている方も多いはず・・・必ずしも「勉強がデキる人=仕事がデキる人」ではない。
仕事をするうえで大切なのは、「やる気」とか「マジメさ」、「コミュニケーション能力」など、学力以外の部分が大きいですよね。いくら頭がよくても全くやる気がなかったら良い仕事なんてできません。
今回のテーマは、「学力よりも大事?!非認知能力の重要性」です。
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非認知能力とは?

IQや学力テストで測れる能力を「認知能力」というのに対し、そのような数値では測れない能力をまとめて「非認知能力」といいます。
先ほどの「やる気」とか「マジメさ」、「コミュニケーション能力」などが、まさに非認知能力といわれるものです。
非認知能力は「生きる力」
非認知能力には、例えば次のようなものがあります。
- 意欲的である
- 忍耐強い
- 社会性がある
- 協調性がある
- 誠実である
- 好奇心が強い
- やり抜く力がある
- 自制心がある
- 意志力が強い
- 創造性がある
これらの能力は、生きていくうえでどれも重要なものばかりですよね。つまり、非認知能力とは「生きる力」とも言えるようなものなのです。
テストの点数やIQは数値として表れ、変化もわかりやすいので、どうしてもそちらばかりに目がいってしまいます。
もちろん学力も大事ですが、非認知能力こそが子どもの将来の成功に大きな影響を与えるのだといいます。
非認知能力が子どもの将来の成功を左右する

非認知能力の重要性を裏付ける研究として、本書で紹介されている「ペリー幼稚園プログラム」という実験があります。
それは、アメリカで暮らす貧しい家庭の子どもたち(3~4歳)に、次のような質の高い教育を提供するというもの。
- 先生は児童心理学などの専門家
- 少人数制
- 読み書きや歌のレッスンなどを週に5回
教育を受けた子どもたち58人と、受けなかった子どもたち65人を比較し、教育がどのような影響をもたらすのかを検証しました。
その結果、子どもたちの小学校入学後のIQや学力テストの結果に差が出ました。
教育を受けた子どもたちは、受けなかった子どもたちに比べ、IQと学力が高かったのです。でもこの結果は何となく予想通りのような気がしますよね。
ところが、IQの差は入学後にだんだんと小さくなっていき、8歳前後になると差がなくなってしまったそうです。つまり、質の高い教育を受けても「学力への効果はごく短期的なもの」だったということです。
でも、このプログラムの本当の効果が、その後40年間にわたる追跡調査で明らかになります。
その後の追跡調査の結果、次のようなことが明らかになりました。
質の高い就学前教育を受けた子どもたちは、受けていない子どもたちに比べ、
- 6歳時点でのIQが高かった
- 19歳時点での高校卒業率が高かった
- 27歳時点での持ち家率が高かった
- 40歳時点での所得が高かった
- 40歳時点での逮捕率が低かった
プログラムに参加した子どもたちは、その後の人生において、学歴や年収が高く、犯罪を犯す確率も低かったのです。
「学力の差はすぐに埋まってしまうのに、どうしてこのような差が生まれたんだろう?」って思いますよね。
それは、ペリー幼稚園プログラムが「非認知能力を育てていた」からといわれています。当プログラムによって改善されたのは、IQや学力テストの成績ではなく、非認知能力だったのです。
この研究を実施したシカゴ大学のヘックマン教授らは、このように強調しています。
学力テストでは測ることができない非認知能力が、人生の成功においてきわめて重要です。そして、これらの能力は人から学び、獲得するものなのです。
重要な能力は「やり抜く力」と「自制心」

非認知能力の中で最も重要な能力は、「やり抜く力」と「自制心」であると著者はいいます。
「やり抜く力」「自制心」とはつまり、遠いゴールに向かって興味を失わずに努力し続けることができる力のことです。
「やり抜く力」と「自制心」はどうやって伸ばす?
ではこの2つの能力をどうやって伸ばせばいいのでしょうか。
まず「やり抜く力」を伸ばすには、「心の持ちよう」が大切だといいます。親や先生から定期的に次のようなメッセージを伝えられた子どもは、やり抜く力が強くなり、成績が向上したことが心理学の研究で明らかになっているようです。
自分の能力は生まれつきのものではなく、努力によってあとから伸ばすことができる。
そして「自制心」を育てるうえで大切なことは、「何かを繰り返し継続的に行うこと」だといいます。
もし子どもが意欲的にやりたがっていることがあれば、それを続けられるようにサポートしてあげること。そして、「自分はできる」と信じさせてあげることが大切、ということですね。
参考書籍
今回は、こちらの本の『第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか?』を参考にしました。
本書では、「ゲームは子どもに悪影響?」「子どもはほめて育てるべき?」「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」など、子育て・教育についての身近な疑問に、教育経済学者の著者がデータを用いてはっきりと答えてくれます。